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~週末に少年に戻るためのメモ~

現代語訳 学問のすすめ 福沢諭吉

実学のすすめ

福沢諭吉のすすめる学問は生活の立つ実学の事を言う。社会の役に立たない学問は学んでもそれは無学に等しい。近年ではgoogleを使えば即座に知らない事柄について調べられるため知識を保有している事(記憶しておく事)はあまり必要でないように錯覚してしまう。本書が描かれた明治時代には、勿論googleのような便利な技術は無かった訳で、その時代に学び記憶している知識や教養というものは宝であったに違いない。ただその知識や教養は頭の中の宝にしておくのではなく、世の中の人や社会ひいては国の為に使って、活かしてこそ学問である。と説いている。

やたら情報が溢れるこの現代で情報をつかむ事だけでは価値が無い。情報を自分の中で調理し何かの役に立つように出力する事が現代の実学なのであろう。

 

天は人に上に人を造らず、人の下に人を造らず

人間は生まれながらにして平等に生きる権利をもっている。福沢諭吉自身は中津藩の下級藩士の息子として生まれ幼き頃に父が他界、封建門閥制度に矛盾を抱き大阪の蘭学の大家緒方洪庵の塾にて蘭学を学ぶ。平等の権利を人が持つということは、好きなことを自由になりふり構わずして良いと言う事ではない。常識的な学問を有し国や社会の為に尽くすことを前提に国民は皆平等であり、また国民が学力を付ける事でそれが国力となり諸外国からの脅威に負けない強い国を造るのである。法律は守る側にも学力があって効力を発揮するものである。江戸の封建社会では武士以外は学力不要の社会であったが、明治維新により文明開化の夜が明け、教育勅語制定により政府により全国の学校指定教科書に「学問のすすめ」が使われた。本書が明治維新の青少年に強い影響を与えた。

 

慶應義塾たるもの

優秀な学生を育て国民の知力を高めるために慶應義塾を開いたのが安政5年(1858)。築地の中津藩邸内にである。時代に合わせ蘭学から英学の先駆者となり外交文書の翻訳官、遣外使節団に随行して洋行する機会に恵まれた経験を活かして西洋事情など多くの西洋紹介書を刊行。最先端の西洋文学や科学技術を学ぶ学生で溢れていたに違いない。そんな歴史ある義塾で学べた事に今更ながら感謝の念がこみ上げる

 

本書はこれまで古典的な印象が強くちゃんと読む機会を避けてきた。明治時代の教科書として使われた本書に触れることが無かった人は是非この現代語訳版を手に取ることを勧めたい。


学問のすゝめ (岩波文庫)

学問のすゝめ (岩波文庫)